うつ病・パニック障害の専業主婦が考えていること

病歴10年以上の専業主婦が、もがきながらなんとか病気と向き合っている日々を、気が向いたときになんとなく書いているブログ

 

躁状態の突っ走り旅行~その5『バナナジュース』

六畳一間で4つの卵と過ごしたあと、京都へと出発するため、今度こそ新宿の夜行バス乗り場に向かった。

下北の駅で電車を待っていた。

まだ日も高く、とても暑い日だった。

ベンチに座って荷物を横に置いてぼけーっとしてると、一人の女性が歩いてきた。

40代くらいかなぁ。

同じように電車待ち。

暑いよね。立ってたら疲れるよね。

『あ、ここ座りませんか?』

と、隣に置いていた荷物をよけながら声を掛けた。

女性は、初めはちょっとびっくりしてたけど、『あぁ、ありがとう』と言って座った。

また、ぼけーっ。

『旅行か何かですか?』

女性が声を掛けてきた。

さっきベンチからよけた荷物を見てそう思ったみたい。

『あ、はい。』

どこから来たんですか?これからどこか行くの?とか、最初は世間話から始まった会話。

私を知ってる人がいない土地で、開放感に溢れてて、たかが外れた(吹っ飛んだ)私は、自分のことをペラペラ話していた。

知らない人だから話せた。

『今、病休で仕事休んでるんです。うつって診断されて。

でも家で何もしないでいるのもなんだから、一人旅の最中で』

女性は驚きと心配が混ざった顔で聞いてくれた。

『仕事大変なんだね。

でも、あなたなら大丈夫だよ。

こうやって私に「座らない?」って声を掛けれるんだもん。優しい気持ちを持ってるんだもん。ね?』

って、一生懸命、言葉を選びながら話してくれた。

そして『ちょっと待ってて』と言って、走ってどこかに行ってしまった。

???と思いながら、でも女性が言ってくれた言葉が嬉しくて、温かい気持ちになっていた。

女性がまた走って戻ってきた。

手には紙パックの『バナナジュース』。

そのバナナジュースを私の手に握らせた。

え???と思いながら受け取ると、

『あなたなら大丈夫。絶対、大丈夫だよ。

暑いからバテないようにね。

これ、飲んで。あっちの自販機で買ってきたから。

ほんとは何か食べるものがあればいいんだけど』

うわぁ。。。なんか、なんか、お母さんみたい。

びっくりと、嬉しさと、一気に女性を身近に感じたのとで、なんだか言葉に表せないような気持ちがぶわぁっと溢れてきた。

『ありがとうございます!』

そんなことしてたら電車がホームに到着。

行き先を見ると私が乗る電車ではない。

女性が乗る電車のよう。

あぁ、なんか、どうしよう。

とにかく『ありがとうございます!』を何回も言った。

女性は何回も『大丈夫だよ。大丈夫だよ。』って。

どうしよう、行っちゃう。

『また、今度』でもないし、『お元気で』もなんかよくわかんないし、とにかく『ありがとうございます!』しか言えなかった。

女性も電車に乗り込みながら、手を振ってもいいのか、そんな仲なのか、『またね』でもないし、でもバイバイ、みたいに小さく手を振ってくれた。

あぁ、行っちゃった。。。

バナナジュース。

なんか笑っちゃった。

ありがとう。

体の心配をしてくれて、何かできないかなって考えてくれて、とっさに『何か飲み物!』って思ってくれて、自販機行ったらバナナジュースがあって、『これだ!』って選んでくれたんだろうな。

なんか、一瞬の、ほんの一瞬の出会いだったけど、すごーく温かい出会いだった。

バナナジュース、ベンチで飲んだらおいしかった。


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